11月1日によせて〜学力だけじゃない、小学校受験の3つの要素
小学校受験の幼児教室にとって、11月1日というのは特別な響きを持った日です。それは中学校受験界隈において、2月1日が特別な響きを持つのと同じように。
11月は一年のスタートでもあり、一年の総決算でもあります。そう、11月1日には、東京都の多くの私立幼稚園や私立小学校で、入試(いわゆるお受験)が始まるのです。
この1〜2週間は、紺色のワンピースを着たお母様たちと、スーツを着たお父様たち、そしてご両親に手を引かれて歩く小さな年長さんたちが、都内の街を緊張の面持ちで歩く週間です。
紺服の子どもたちを幼稚園や小学校にむけて送り出す仕事に従事し、はや十数年。
この日を迎えるにあたって、それぞれのご家族で幾多のドラマがくりひろげられていることをよく知っています。
幼稚園帰りの遊びの誘いを断って幼児教室通いをしたこと。
貴重な休日である土曜と日曜もフルで幼児教室に通ったこと。
春休み、ゴールデンウィーク、夏休み、旅行を我慢してペーパーをやったこと。
そのご家族一丸となった経験が、きっと実を結びますように。

学力だけでは決まらない。小学校受験3つの要素
そんな小学校受験ですが、ペーパーテストの結果だけでなく、別の要素が結構な割合で加点されます。
たとえば、中学受験は学力です。高校受験も大学受験も学力です。その日の筆記テストができれば合格、筆記テストの点が足りなければ不合格。
そうです。とてもわかりやすい。
でも、小学校受験はそうではないのです。本人のペーパーテストだけで合否は決まりません。
なんでしょう?
「え、裏金?」
・・・直球すぎますね。さすがにそれは違います。(違うと信じています)
「コネ?」
うーん・・・コネというより、縁故なら多少はあるかも。
兄弟姉妹がすでにその学校に通っているとか。保護者が昔、その学校出身だったとか。
学校側から面と向かって「おたく、我が校との縁故ありますか?」とは聞かれませんし、学校によっては「兄弟姉妹の枠など、一切ありません!」と言い切る学校もありますので、ケースバイケースですけれど。
中受でもなく、高受や大学受験でもない、小学校受験独特の3つの世界観。
それは「願書(学校への理解度)」「面接(保護者の雰囲気)」「行動観察(一見、こどもが遊んでいるだけのように見えるテスト)」の3つの要素です。

1)願書
東京には私立小学校が54校もあります。学校説明会に行ってみるとわかりますが、本当にカラー(校風)がそれぞれ違います。
たとえば、中学受験に特化した学校があります。
都内では東京都市大学付属小学校とか、宝仙学園小学校とか、国立学園小学校とか。神奈川でいうと、難関中学校受験合格率ダントツ一位の洗足学園小学校とか。
そういう学校に、ゆったりのんびりおっとり型で競争嫌いなお子さんとか、長時間の勉強よりもスポーツや芸術のほうに興味が強いお子さんが入ってしまうと、ちょっとミスマッチが起こります。
そういうミスマッチをふせぐために、「ちゃんとこの学校のこと、知ってくれているのかな?」っていうのは、学校側からするととても知りたいこと。
学校説明会も1回だけではなく、何度も足を運びましょう。
入学した後に「こんなはずじゃなかった!」と、思わないためにも。
「御校の学校説明会も、運動会や学校行事も、全部参加しました。なんなら、他の学校も数多く、それこそ都内近郊あわせて20校くらいは説明会に行きました!そのうえで、御校を希望しています!」
・・・という保護者は、学校にとっては安心できます。だって、いろいろ見てきた中で、うちを選んでくれたんだという安心感がありますでしょ。
ちょっと就活みたいですけれど。
「よその会社じゃなくて、なぜうちの会社なの?」って、面接官は思うじゃないですか。
小学校受験も同じです。
学校が公開している行事や説明会に足繁く通い、そこで気がついたこと、記憶に残ったこと、感動したことなどを「希望理由」や「家庭の教育方針」や「こどもの長所短所」の欄に、オリジナルの言葉で書くのです。
希望理由や教育方針やこどもの性格ならまだしも、なかなか難しいお題もあります。
農大稲花小学校の今年の願書(事前面接用質問票)の恒例の1080文字のお題とかね。
「志願者が社会人になる頃、社会はどのような認知能力および非認知能力を求めるようになっていると思いますか。また、それを踏まえ志願者をどのように育てたいと考えていますか。」
こんなお題、「”認知能力?非認知能力って、なんぞや?”って保護者は来てくれるな」って学校側のメッセージですからね、おそらく。これを1080文字で書くって、なかなかですよ。なかなかの難易度。
こんな感じの願書作成があるのが、小学校受験の独特なポイント1つめです。

2)面接
小学校では保護者との関わりが強いです。
忘れ物の対応、日々の宿題の管理、お友達関係、給食やら遠足やら授業参観とか運動会のお手伝いやらPTAやら・・・小学校というところは、とにかく保護者が絡む事柄が多いです。
ということは、細かいことにいちいち文句を言ってくる保護者とか、何かにつけてケンカごしの保護者とかは、嫌なんですよ、学校って。(←学校じゃなくても、誰だって嫌ですよね)
だって、そういう保護者がクラスに複数いるとどうでしょう。
先生たちはその対応に時間が取られます。
本当は児童たちの授業の準備に充てたい時間を、クレーム処理や保護者対応に忙殺されます。
クレーム対応で心がすり減ってしまった先生が退職に追いやられたりして、先生が足りなくなったりして、そうなると教育活動に支障も出るでしょう。
だから、どんな保護者かどうかは、面接で見極めたいというのが私立小学校の本音なのだと思います。
クレーマーになりそうな保護者は、当然、面接でブロックされるでしょうが、とはいえ、保護者もみなさん大人です。
面と向かって「わたしたち、クレーマーですけど、何か?」みたいなアピールをする人など皆無です。そりゃそうです。みな、それぞれの幼児教室で、面接の練習をして本番に臨みます。
幼児教室で何度も面接の練習をしているうちに、はじめはちょっと横柄キャラなお父様でも、受験生保護者としての顔つきになってきます。
上から見下ろす感じがなくなり、穏やかで柔和な保護者としてのオーラが出てきます。
小学校の面接では、いかに有能な職業人かとか、いかに出世しているかとか、いかに年収が高いかとか、そういうことではなく「謙虚で、素直で、あたたかい保護者かどうか」が重要なのです。
(とはいえ、謙虚で素直で穏やかな仮面を被ったクレーマーかもしれません。そこを見抜くのが、学校の面接官の仕事ともいえるんでしょうけれど)
面接を通過したご家族は、やっぱりどこか似た雰囲気になります。
学校愛に対する熱量は各家庭ごとにいろいろかもしれませんが、すくなくともみんな「この学校に入りたい」と思って受験してくるわけですから。
そうして長い年月をかけて、クレームが発生しにくい土壌が醸成されていくのだと思います。

3)行動観察
上の二つはおもに保護者のことでしたが、こどもにとって非常にむずかしいのはこの「行動観察」です。
小学校受験にあまり詳しくない方から見ると、おそらく「ただ子どもたちが遊んでいるだけ」のような試験です。いたって楽しそうな場です。
そう。楽しそうに遊んでいるだけに思ってしまうので、もしかしたら「うちの子、ふだん幼稚園や保育園でもよく遊んでいるから、遊ぶテストならできそうよね。」という保護者が、いらっしゃるんですよ。
何を隠そう、私もこの仕事に就く前は「いやいや、そうは言っても普通に遊ぶだけでしょう?楽勝じゃないの?」と思っていましたよ。評価基準も詳しくは知らなかったですし。
ところがね。
これが違うんです。
行動観察は、ただの遊びではない。「採点される」ということなんです。
よくあるのが、「お友達と協力して、紙コップでタワーをつくりましょう」的なグループワーク。
子どもたちの素が丸見えになるんです。
恥ずかしがってなかなかグループに入れない子。(そういう子でも良しとするかどうかは学校のカラーによる)
一人でどんどん積み上げてしまう子。(これは「お友達と協力して」という指示が聞けないね、と判断されてマイナス評価になるでしょうね)
思うようにいかずにヘソを曲げてしまう子(これもよくあります。ケンカまではいかなくても、紙コップを取り合いになってしまったり)
タワーを作らずに紙コップを転がして遊んでいるうちにサッカーみたいになって、紙コップをふざけて蹴りあいっこしたり、投げ合いっこしたり、そういうことも大いにあるお年頃。
「はい、やめ」の指示があったら、すぐに手を止めて先生のほうを見ることができるかな?
「片付けましょう」の号令で、私語をせずにササッと行動に移せるかな?
行動観察の最中、先生がたはよく見ておられます。
この子たちが小学校に入ってきた時に、「どんな学年になるかなあ」と想像しながら。
お友達とケンカになって叩いたり蹴ったり、あるいは言葉使いが著しく乱暴だったり、先生の指示を素直に聞けなかったり、ふざけが過ぎるお子さんは、どんな学校でもおそらく評価をもらえません。
(だってトラブルになる可能性が高いということですからね。。。)
この辺、誤解があるといけないんですけど、「その子がいい、悪い」ということをジャッジしているのではなく、あくまでも「うちの学校に合うかどうか」という尺度で見ていらっしゃると思います。どうか誤解がありませんように。
反対に、困っているお友達に優しく声をかけたり、モノの扱いがとても丁寧だったり、言葉使いや姿勢や佇まいが美しかったりすると、「キラッと光るお子さんですね。」とプラス要素となります。
キラっと光るお子さんになるには、日々の生活が大切です。1ヶ月や2ヶ月では身につかないことです。
わたしだって、明日からいきなり「キラっと光るアラフィフになってください」といわれても、難しいです。
でも、ご家族にとって小学校受験が、親子ともに美しい佇まいを身につけるチャンス!と捉えられると、そこで身についた立ち居振る舞いは、きっとお子さんにとって一生の宝となるでしょう。
以前、中学受験塾の先生に言われたことがあります。「集中すると上履きの踵を踏むお子さんがいた。それは、その子にとっての集中だから、ポジティブな事象」と。上履きのかかとを踏んでいても、試験の結果には響きません。多分。
でも小学校受験では「上履きのかかとはきちんと入れて履きましょう」なんですね。上履きのかかとを踏むことは、ネガティブな印象となるし、入試の際にはチェックされることもあるでしょう。
危ないし、かかと踏んでいたら転びやすいし。うわばきを丁寧に履くという習慣が身についていないのかな?という印象になります。
中学受験と小学校受験のどちらがいい、どちらが悪いということではなく、試験の性質が違うのだと思います。まだこどもが5歳という幼児だからこそ、基本的なことも見られる試験なのですね。
「上履きを脱いだら揃える」とか。「かかとを踏まないようにする」とか。「ポケットに手を入れないようにする」とか。「トイレに行ったら、ズボンにシャツを入れる」とか。「カバンの中を整理する」とか。「呼ばれたら返事をする」とか。「トイレから出たら手を洗ってハンカチで拭く」とか。
こういったことを全部ひっくるめて、小学校受験の準備は行われるのです。
まとめ
小学校受験は、本人のペーパーテストの結果だけでなく、別の要素が結構な割合で加点されます。その要素とは、以下の3つです。
1)願書(学校のことを理解しているかどうか)
2)面接(どんな保護者か)
3)行動観察(子どもたちの様子)
これらをまんべんなく準備することで、その子も土台を作るのが小学校受験です。
・・・と、そろそろ今日の午前のテストがみな終わる頃だな。今日は11月1日。毎年、わたしにとっても特別な日です。
今日のお子さんたちの行動観察も、きっとうまくいくことを願って。合格をこころより願っています。
小学校受験・幼稚園受験のMBキッズカレッジ(世田谷用賀校)


